対人恐怖症はうまく会話ができなくなったり、会議で全然発言できなくなるなど、仕事に大きな影響を与えます。
また、「人見知りや緊張しやすいとか、ただの性格的な問題でしょ?」「仕事では人と接するのが苦手とか、甘えじゃない?」などと、周りから理解が得られない場合もあります。
人によっては家族にすら理解されない場合もあるでしょう。そのため、誰にも相談できずに悩みを抱えている人もいます。
では、対人恐怖症で悩んだときは、どうすれば良いのでしょうか?
対人恐怖症で仕事を辞めたいときの対処法
対人恐怖症は周囲の理解が得られないので、1人で悩みを抱えてしまいがちです。1人で悩んだ結果、仕事を辞める決断に至ってしまうこともあります。
では、仕事を辞める決断に至らないようにするには、どのような対処をすべきなのでしょうか?
対人恐怖症の自覚を持つ
対人恐怖症を持つ人の中には、自分が対人恐怖症であることに気がついていなかったり、そもそも対人恐怖症という言葉を知らなかったりする場合があります。
もし、対人恐怖症を自覚がなければ、「うまく会話しなければいけない」「もっと発言しなければいけない」などと思って、無理をしてしまいます。
対人恐怖症は心の障害なので、無理に人と接しようとするのは風邪のときにプールに入るようなものです。
状況を悪化させないためにも、まずは自分が対人恐怖症であると自覚し、適切な対応を取るべきだと把握しなければいけません。
過去の退職理由を振り返る
対人恐怖症は仕事に大きな影響を与えるため、自覚せずに何の対処もしなければ、最終的に退職に追い込まれる危険性があります。
また、転職をして職場環境を変えても根本の解決にはならないので、転職を繰り返す要因となってしまいます。
転職を繰り返せば、キャリアアップやスキルアップなどがスムーズにできず、将来に大きな影響を与えるでしょう。
転職に歯止めをかけるためにも、これまでの退職理由がうまく話せない、人前だと異常に緊張するなどの人と接するものではないか確認してみましょう。
もし、退職理由が人と接するものに関係するものばかりであれば、対人恐怖症と自覚でき、適切な対処法が必要だと認識できます。
対人恐怖症でもできる部署を希望する
対人恐怖症の人は大勢の人がいる場面で仕事をしたり、初対面の人と接したりなどすることが苦手です。
人によっては電話やメールもできない場合もあります。そのため、できるだけ自分にとって仕事のしやすい環境を求めて、部署の異動を希望しても良いでしょう。
事務でデータ入力、システム部でプログラミングなど、なるべく1人で作業が完結し、あまり周囲とコミュニケーションを取らなくても良い仕事が望ましいです。
また、通勤すら苦手という場合は、テレワークの希望をしても良いでしょう。
少しづつ理解者を作っていく
対人恐怖症は社交不安障害や社会不安障害とも呼ばれ、不安障害の1種です。
しかし、対人恐怖症についてはそれほど認知度は高くなく、周囲が理解してくれないことがあります。
ただ、周囲が知識を持てば理解が進み、対応が変わることもあるでしょう。自分がただ人見知りや緊張しやすいだけなわけではなく、対人恐怖症という病気があると周りに少しずつ伝え、時間をかけて理解者を増やしていきましょう。
専門医に相談する
対人恐怖症の症状には会話がうまくできなかったり、人前で緊張したりなどがあります。そのため、気持ちの問題や、頑張れば克服できるなどと思ってしまいます。
しかし、対人恐怖症は不安症の1種であり、気合では治りません。むしろ、無理に人と接することで状態が悪化する危険性もあります。
不安症では呼吸困難や不眠、パニックなどを起こして日常生活に支障をきたすこともあるので、必ず専門医に相談しましょう。
専門医に診断してもらうことで、今の自分の状態を正確に理解できます。また、薬物療法や認知行動療法などの必要な治療法もわかるでしょう。
対人恐怖症で仕事を辞めたいときに考えるべきこと
転職をして環境を変えても、対人恐怖症への対処ができなければ、また仕事を辞めたいと思ってしまうでしょう。そのため、できれば仕事を辞めたいと思ったときには、転職せずにその考えを消すことが望ましいです。
仕事を辞めたいという考えを消すには、人や仕事への考え方を少し変えることがコツとなります。
新たな職場で人間関係を構築する必要がある
もし、転職して新しい職場に移れば、人間関係はリセットされてしまいます。
派遣でコロコロ職場が変わるなら人間関係をそれほど気にしなくても良いですが、就職して腰を据えるとなれば大変です。
初対面の人たちに囲まれたり、新しい人間関係を築くのは簡単ではありません。対人恐怖症であればなおさらでしょう。
わざわざ転職して、苦手なことをするくらいなら、すでに人間関係が築けている今の職場に留まった方が楽だとは思えませんか?
転職するなら思考を変え、自分が理解してもらえる職場を探して移動するのではなく、今の職場における対人恐怖症の認知度を上げて自分に適した職場環境に変えてしまいましょう。
周りが対人恐怖症を理解することで、環境が改善されていきます。
仕事に興味を持つよう心がける
会社には友達を作りに行っているわけではありません。極端な考え方ですが、コミュニケーションが取れなくても、仕事で大きな結果を出せば誰も文句は言えません。そのため、仕事に集中して、他人のことは気にしないようにしましょう。
また、大きな結果を出す自信がない場合は、仕事に意識を集中させるだけで良いでしょう。
意識を集中して、視野を狭めると周囲のことは気になりません。
心を開いて同僚とコミュニケーションをとってみる
人と接することが苦手な人は、なるべく人と接しないように壁を作る特徴があります。
壁があることで周囲の人を遠ざける原因となり、いつまでも状況に変化が起こりません。現状を変えるためにも、心を開いて無理のない範囲で周囲とコミュニケーションを取ることに挑戦してみましょう。
まずは接しやすい同僚と話してみることがおすすめです。また、職場カウンセラーが会社に設置されている場合は、カウンセリングを受けてみても良いでしょう。
心理学やメンタルヘルスの専門知識を持っているので、的確なサポートが受けられます。
対人恐怖症に向いている職業
個人で作業を進めるような仕事であれば、人と接する機会が少ないので対人恐怖症でも少ないストレスで仕事ができます。
では、対人恐怖症の人に向いている個人で作業を進める仕事には、どのようなものがあるのでしょうか?
清掃スタッフ
清掃スタッフはチームで仕事はするものの、担当する場所がそれぞれに割り当てられ、作業自体は個人で行います。
そのため、仕事中は1人で黙々と清掃することになり、仲間とのコミュニケーションも必要ありません。
また、夜のビル清掃であれば、会社で働く人たちもおらず、完全に1人という状況になります。
ただし、2人や3人でチームを組んで作業することもあります。募集要項や面接などで作業のやり方は確認しておきましょう。
在宅ワーク
自宅で仕事ができれば、周囲の目を気にすることがないので、対人恐怖症でも業務が進めやすいです。
近年ではテレワークを導入する企業は増えています。在宅ワークにできないか上司に相談してみましょう。
また、フリーランスとして独立し、在宅ワークに切り替えるという方法もあります。
Webライターやプログラマー、イラストレーターなどの仕事は在宅ワークで対応可能です。
これらの仕事はクラウドソーシングのサービスを利用すれば獲得できます。
ただし、フリーランスは個人事業主であり、クラウドソーシングでの受注はアルバイトではありません。
経験やスキルがなければ仕事自体が獲得できず、契約や仕事内容で大きなトラブルも起こりがちです。
仕事に関する責任やリスクをすべて自分で負うということを事前に認識しておきましょう。
ポスティング・新聞配達
ポスティングや新聞配達の仕事は、担当するエリアを1人で回ることが多いです。完全に1人作業で、宅配員のように住民と接することもありません。
ただし、夏も冬も関係なく、猛暑も台風も関係なく仕事があるので、仕事がキツく感じる人もいるでしょう。
また、住民からクレームが入る可能性があります。対人恐怖症であれば、住民から怒鳴られることで、一気にメンタルがやられる危険性があるので注意が必要です。
工場のライン作業
工場のライン作業は隣に人はいるものの、基本的には黙々と自分の作業に没頭することになります。
他の人も作業に没頭しているので、人との距離は近いですがコミュニケーションは発生しにくいです。
ただし、工場勤務は周りに多くの人がいるので周囲の目は気になる人もいます。
また、熟練者は作業しながら話しかけてくることがあります。相手は良かれと思って話しかけてくれているのでしょうが、対人恐怖症であれば辛さを感じることがあるので注意が必要です。
これらの他にも対人恐怖症に向いている仕事はいろいろあります。ハローワークでは障害者の専用相談窓口が設置されていたり、障害がある方に就活支援をする就労移行支援など、活用できる就労支援機関があるので、これらの活用も検討してみましょう。
まとめ
対人恐怖症は周囲に理解してもらいにくいので、仕事を辞めたいと思ってしまう場合があります。どうしても辛い場合は辞めるのではなく、休職するのも1つの手です。
ただし、辛い思いをするのは、職場での対人恐怖症に対する認知度が低いだけの可能性があります。
知識を持つことで、今まで理解されなかったことを理解してもらえるようになる場合もあるでしょう。
新しい職場で、新しい人間関係を築くのは対人恐怖症にとっては辛いことです。そのため、今の職場で対人恐怖症のことを理解してもらいましょう。